私の妊娠が発覚してからいろいろ考え、彼氏とじっくり話し合った結果、Common-Lawのままで出産することにしました。
結婚はしません。将来、いつか結婚するかもしれませんが、今はそのタイミングではないと思っているからです。
そこで問題となってくるのが、お腹の中にいる子供の「出生届」です。
カナダと台湾では、結婚しているかどうかは問題ではなく、事実上の子供の父親(母親)を出生届に記入することができます。
しかし日本では、カナダのCommon-Law関係を「婚姻関係」とみなさず、私は日本の戸籍上、今も独身です。独身の母親から生まれた子供は「非嫡出子」となり、出生届の父親欄を空欄にしなくてはいけません。
「なんとか彼氏の名前を子供の出生届に載せれないか」と考え、思い立ったのが、「胎児認知」でした。これを出産前にしておけば、子供が生まれた際、(日本への)出産届に彼氏の名前を書くことができます。まずは、その手続き方法を確認しにバンクーバー領事館に行ってきました。
そしたら、領事館員に、
「父親が日本人で母親が外国人の場合は、日本国外で胎児認知届を出すことができるが、父親が外国人で母親が日本人の場合は、日本国内でしか胎児認知届を受け付けない」
と言われてしまいました。
その日の夜、彼氏に「胎児認知というのがあるんだけど、父親が外国人の場合、領事館では手続きできないんだって。お腹の子供の出生届に、あなたの名前書くことができなくなっちゃったよ」と言ったら、「えぇ~」と口を尖らせてしまいました。「二人で日本に行けば、胎児認知届出せるよ。手続きをしに、日本に行く?」と聞いたら、二つ返事で「行く」と言ったので、日本に一時帰国することにしました。
(書類上だけでも「結婚(婚姻届提出)」すれば、日本に行く必要がないのですが、それも踏まえて話し合った結果、やはりこのタイミングでは結婚しないという結論です)
でも、実は密かに、「子供が生まれたら、この先最低15、6年は、二人っきりのラブラブ旅行ができなくなるんだろうな。生まれる前にもう一回ぐらい、旅行しておきたかったなぁ・・・」とちょっと残念に思っていました。そこに突然、降って湧いた一時帰国の話だったのです。彼氏は仕事を休まなくてはいけなくなるので、表面上、彼氏に気を遣って「手続き面倒だけど仕方ないね」と言っていますが、心の中では大喜び!ガッツポーズです。
まずは私の体調を考え、12時間のフライトでも大丈夫な妊娠週数を調べ、その時期に合わせて彼氏が職場の上司に掛け合って2週間の休暇を取りました。せっかくなので、「台湾経由日本行き」にし、前半を台湾、後半を日本に滞在することにし、スケジュールに合わせて航空券を手配しました。
そして、最後にもう一度確認のため、領事館に行きました。
前回は男性の領事館員が対応してくれたのですが、今回は女性の領事館員が対応してくれました。しかし、彼女は胎児認知届にあまり詳しくなく、私と話をしている間、何度も領事館の“奥(カウンターから見えないところ)”に聞きに行き、最終的に、彼女が聞きに言っていた相手が奥から出てきて直接私と話すことになりました。
その“奥から出てきた”領事館員は、領事館で提出されたさまざまな届出の内容に間違いがないかどうかチェックし、外務省に送付する担当の方で、これまでカナダで出産した多くの日本人女性の出生届の手続きを行ってきたそうです。また、父親が日本人で母親が外国人のケースの胎児認知届も行っています。その方から、
「父親が日本人、母親が外国人のケースで胎児認知届が提出される理由はただ一つ、子供に日本国籍を与えたいからです。しかし、母親が日本人の場合は問題なく自動的に子供に日本国籍が与えられます。あなたの場合も生まれてくる子供には日本国籍が与えられます。だから、胎児認知届にメリットがありません。Common-Law関係で子供を生んだ日本人女性は、大抵、出生届の父親欄を空欄にして提出されてますよ」
と言われました。
そして、「将来、そのパートナーの方と結婚されますか?」と聞かれ、「はい、多分」と答えたら、「胎児認知届は妊娠中、認知届は出生後3ヶ月以内と提出期限がありますが、もし子供の父親と結婚した場合、10年先になろうが、20年先になろうが、婚姻届といっしょに子供の認知届を出すことができます。認知届を出した時点で、その方は子供の正式な父親です。もし将来、結婚される予定なら、今、胎児認知をすることは意味がないとも言えます」
ということでした。
でも続けて、「ただ、出生時の父親が誰なのかにこだわりたい、もしくは将来、兄弟間で出生時の父親が違うという状態を避けたいのであれば、今、胎児認知をしてもいいと思います。父親が外国人の場合、カナダでは胎児認知届を出すことはできません。日本でのみ提出することができます。日本に行き、ご自身の本籍がある市役所で胎児認知届を提出し、そこで“胎児認知届出の受理証明書”をもらってきてください。そうすれば、カナダでお子さまが生まれた時、胎児認知届の父親名を出生届の父親欄に記入することができるし、胎児認知届出の受理証明書と出生届といっしょに提出して頂ければ、届出を受け付けることができます」
ということでした。
その日の夜、領事館で言われたことをそのまま彼氏伝え、「というわけだけど、それでも台湾と日本に行く?胎児認知する?」と聞いたら、「もう休暇取っちゃったし、航空券買っちゃったし、台湾行きたいし(今回、彼氏にとって19年ぶりの台湾帰国なのです)、せっかく日本に行くんだから、胎児認知しておこうよ」と言うので、旅行計画は全て変更しないことになりました。
さて、考えなければいけないことは、まだまだあります。
日本の戸籍上、私は独身なので、現在、私は両親の戸籍に入っています。しかし、子供が生まれれば、私は自動的に親の戸籍を抜け、自分の戸籍を作る(分籍する)ことになります。私の今の本籍がある市役所は、海外が絡むケースにとても疎く、これまで結構大変な思いをしてきました(年金手続きの時とか)。いい機会なので、子供が生まれる前に分籍し、新戸籍の本籍地を違う市町村に変更することにしました(変更するのは本籍地のみです。住民票はそのままです)。
新本籍地の条件は、「戸籍謄本などの書類を海外に郵送することが可能なところ」「外国人住民が多く、海外が絡むケースに前例があるところ」「空港からアクセスしやすいところ」の3つです。
条件に合いそうな自治体を3つほどピックアップし、Skypeでそれぞれの区役所・市役所に電話し、「父親が外国人・母親が日本人のケースで胎児認知届を出したいです。父親は台湾人です。同時に分籍手続きもし、新本籍地を○○○(問い合わせ先の自治体)にしたいです。必要な書類は何ですか?」と聞いてみました。
それにしても、自治体によって、こんなにも差があるとは! 自治体ごとに胎児認知届に必要な書類が違い、胎児認知届と分籍届を両方同時に行う方法を教えてくれるところもあれば、「私では分かりかねます」と言って、何も教えてくれずに電話を切られてしまうところもありました。偶然、私が以前(17年ほど前に)住んでいたところが一番対応が良かったため、(区役所の場所も建物の中についてもすでに知っている)その自治体を新本籍地にすることに決めました。
ちなみに、今回電話して分かったことは、現在私は「海外転出届」を出していますが、胎児認知届や分籍届を出すのに日本に住民票を戻す必要がないとのこと(戻さなきゃいけないと思ってました)、そして、日本と台湾は国交がないため、彼氏を「中華民国」国籍にすることはできず、「中国国籍(中華台北)」となること、また、漢字圏の国のため、届出に記入する名前に漢字が使えるということです(名前に使われている漢字が日本で使用されている漢字と形が違う場合、日本式の漢字に変更しなくてはいけません。彼氏の名前に使われている漢字は全て、日本の漢字の形と全く同じであるため、変更の必要はないとのことでした)。
あと、今年の夏、彼氏はカナダの市民権(国籍)を申請する予定ですが、もしカナダ国籍を取った場合、日本の国籍に記入された彼氏の国籍情報を、後からでも変更することが可能だそうです。しかし、もしカナダ国籍に変更するのであれば、名前をカタカナに変更しなくてはいけません(カナダは漢字圏の国ではないから)。それも彼氏に伝えたら、「僕の名前、漢字で扱って欲しいから、“中華台北”でいいよ」ということでした。
(注意: 以上の情報は、2012年6月現在のものです。今後、法律が変更される可能性がありますので、最新情報については、お住まいの大使館・領事館、もしくは市役所・区役所にてご確認ください)
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