一人相撲

昔の、私の片思いの話。

19歳の頃、名駅近くの輸入音楽CD屋でバイトをしていました。その時、クラシック担当の同僚のことが好きでした。

その人は5歳くらい年上で、音大を出ていて、市民楽団でホルンを吹いている人でした。肺活量が要のホルンだからなのか、体格がとてもよく、背が高くてかなり大柄でした。相撲部屋からスカウトが来てもおかしくないくらいの極上デブ(本人談)でした。

私はロック担当で、クラッシック担当の彼とは音楽の趣味が全く合わなかったのですが、それ以外の話はとても合い、性格的にもうまが合ったため、いつも楽しく話をすることができました。当時、私から誘って、毎日一緒に社員食堂でお昼ご飯を食べていました。

でもある日、お昼ご飯を食べている時、その彼にあっさり言われました。

「あのさ、僕のこと、好きだよね?でもゴメン、僕、彼女いるんだよ」と。

ショックでした。

「大学時代から付き合っていて、もう長いんだよ。はははー」

と喋り続ける彼を、涙目で見ながら、

「・・・デブのくせに彼女がいるなんて!デブのくせに!」

と思いました。

その日、バイトを終え、家に帰る途中、電車の窓から外を眺めながら、

「あーあ、彼女いたんだ。なーんだ、私の一人相撲だったんだ」

と思いました。

そして、

「デブ相手に相撲じゃ、勝ち目はないなぁ」

と気付き、スッパリ諦めることにしました。

でも、やはり気の合う人なので、次の日以降もそれまでと変わらず、一緒に社員食堂に行ってお昼ご飯を食べました。他の同僚に、「あの人、彼女いるんだって?それでもいいの?」と言われたりしたけど、「いやいや、そういう仲じゃないから。普通の友達だから。デブ相手に、相撲は勝てないから」と、訳の分からない説明をしたりしていました。

その後、一年ぐらいして私がバイトを辞め、それ以降、その彼とは連絡を取っていません。

今、彼はどうしてるのかな?
きっと、いいお父さんになっていそう。
(でも、名前が思い出せません)

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