場面緘黙症の疑いとBC Centre for Ability


数週間前、デイケアに娘を迎えに行ったとき、チーフの先生に「少し二人で話がしたい」と言われました。他のお母さんの迎えが次々と来て賑やかな中、教室の隅に行き、椅子に座って落ち着いたところで言われたのは、娘に場面緘黙(かんもく)症の疑いがあるということでした。

デイケアでは、毎年、夏休み前にキンダーに上がる子供が卒業していき、9月に新しい子供が入園してきます。今年度はキンダーに上がる子供が多かったため、半数以上の子供が入れ替わりました。元々、言葉の遅かった娘は、夏休み前にやっと少し友達と喋ることができるようになっていたのですが、仲良しだった友達が卒業し、9月に新しい子供たちが入園してきた途端、また以前のように何も喋らなくなってしまったのです。



最初の1ヶ月、娘は新しい子供たちを避けていましたが徐々に慣れ、2ヶ月半経った今では一緒に遊ぶようになりました。しかし、追っかけっこしたり、並行遊びはできるものの、話しかけられると口をつぐんでしまい、何も喋らないのだそうです。

娘がこのデイケアに通い始めてもうすぐ2年。先生は、娘の性格や行動パターンをずっと観察してきました。先生によると、娘は2歳の頃から「とても注意深く(cautious)」、そして「頑固(stubborn)」で、その度合いがとても強かったため特に注意して見ていたら、9月に新学期が始まり、環境が変わった途端、場面緘黙症らしき症状が出てきたということでした。

そこで、先生からBC Centre for Abilityを紹介され、よかったらこの団体のサポートを受けてみないかと提案されました。

BC Centre for Abilityは、年齢問わず、様々な障害を持った人それぞれに必要ななサポートを提供する非営利団体です。そこのプログラムのひとつ「Supported Child Development Program」では、0~12歳の発達障害・発達遅延がある子供に必要なサポートしています。場面緘黙症の子供もサポートの対象となっています。

Supported Child Development Programで行われる具体的なサポート内容は、

  • カウンセラーが、子供が通う施設(デイケア、プレスクール、キンダー、エレメンタリー)を訪問し、先生と定期的にミーティングを行い、子供の障害について説明し、どのように子供に接したらいいかを教え、子供の障害に合った特別なアクティビティをクラスに取り入れるよう指導する(※注1)
  • カウンセラーが子供の保護者と定期的(1ヶ月に一度、2ヶ月に一度の割合)に面談をし、子供の障害の状態や日々の生活について指導をする(※注2)
  • 子供の状態についてレポートを作成し、保護者、子供のファミリードクター、子供が通う施設(デイケア、プレスクール、キンダー、エレメンタリー)に提出する。公立学校に進学している子供は、Vancouver School Boardにもレポートを提出し、状況によっては、学習を補助するための特別なサポート(例:補助教員など)をVSBに提案する

(※注1) 就学前の年齢でどの施設(デイケアやプレスクール)にも通っていない子供は、まず、それらの施設に通い始めることがサポートの前提となります。

(※注2) 英語が話せない家庭には、面談に通訳者を同伴させることができます。

まずは、最近、デイケアの先生が、うちの娘に場面緘黙症があるのではないか?と疑い始めたばかり(まだ確定ではない)であるため、BC Centre for Abilityのカウンセラーと面談し、実際に娘に場面緘黙症があるかどうか判断をして頂くことになりました。

場面緘黙症の子供は、家庭「内」と「外」で言動が全く違います。子供は家庭内でよく喋ることができますが、一旦外に出ると何も喋れなくなります。まずはカウンセラーに家に来てもらい、家庭内で娘がどのような状態であるかを見てもらうことになりました。今日、その家庭訪問があったのですが、リビングで娘とパートナーが遊ぶ様子を見てもらいつつ、ダイニングで私とカウンセラーが娘の状態や環境についていろいろ話し合いました。

カウンセラーが言うには、今日の時点では、娘に場面緘黙症があるかどうか判断はできないが、ある種の“不安症(Anxiety)”を持っているようだ、とのことでした。

あと、

  • 近いうちに娘が通うデイケアも訪問し、娘の状態を観察して今後のサポートについて検討するが、カウンセラーは医療専門家(Medical Specialist)ではないので、正式に「場面緘黙症」と診断を下すことはできない。もし、正式に「場面緘黙症」という診断が必要であれば、ファミリードクター、もしくはスピーチセラピストにアセスメントを行ってもらう必要がある
  • 場面緘黙症は、自由に喋ることができる「家庭」と、喋ることができない「外の世界」の境界線を消すことが大切であるため、「外の世界」で一番心を許している「親友」を、心の安全地帯である「家」の中に来てもらい、プレイデイトをするようにする。まず家に呼ぶのは一人から。慣れてきたら徐々に人数を増やす
  • これまで家では母国語(日本語)と父国語(中国語)のみ使用してきたが、外の世界で最低限必要な簡単な英語のフレーズも教えるようにする
    「遊びに入れて」→「Can I play too?」「Can I play with you too?」
    「おもちゃを返して」→「Can you give me back my toy?」「Please give me back my toy.」「Where is my toy?」
    「トイレに行きたい」→「I have to go to the bathroom.」「I've gotta go to the bathroom.」
  • 娘に他人とコミュニケーションを取るよう促さない(緘黙症は不安症から来ているため、無理をさせると悪化する)
  • 娘は外では常に緊張しているため、家庭内は徹底的に心休まる場所にする。夫婦間の口喧嘩禁止。喧嘩になりそうな時は「I love you, but I don't like when you do....」と一言言って、あとは黙る。娘には「I love dad. But I don't want to talk with him right now.」と言えばよい。頭を冷やすようにする

と、アドバイスされました。(最後の「夫婦喧嘩の方法」では、深刻ながら可笑しくて、笑ってしまいました)

最後に、カウンセラーに「娘さんがこの障害を克服した時、何が出来るようになってほしい?」と聞かれたので、「娘が、自分から友達に“いっしょに遊ぼ”と誘えるようになってほしい」と言ったら、「じゃあ、そのゴールに向かって一緒に頑張っていきましょうね」と言われました。

場面緘黙症は、環境の変化が症状を発症(もしくは悪化)させます。そのため、来年の9月のKindergarten入学と、その次の年の9月のElementary入学の際、娘に症状に何らかの変化がある(多分、悪化するだろう)と思われます。カウンセラーさんに、「場面緘黙症の克服は、短くて2年、長くて10年、もしくはそれ以上かかるから、気長にやっていきましょうね。大丈夫、諦めなければ絶対克服できるものですよ」と励まされました。

とりあえず、今、早急に行わなければいけないのは、ファミリードクターか小児科医のアポイントメントを取り、娘の不安症(Anxiety)を診察してもらうことです。カウンセラーによると、娘は場面緘黙症だけだと判断することが難しく、もしかしたら他の不安障害が場面緘黙症を引き起こしているかもしれないということでした。ドクターに正式に診察をしてもらい、診察結果によっては、心理士によるカウンセリングなどの治療が必要かもしれないし、BC Centre for Abilityも診察結果によってサポート内容を変更する必要があるかもしれないので、まずは正式な診断結果がほしい、ということでした。

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