「発達障がい児のためのスピーチセラピーについて」講演会


今日は、日系サポートグループ「First Step」主催の「発達障がい児のためのスピーチセラピーについて」という講演会に行ってきました。本日のスピーカーは、実際にバンクーバーで活動している二人の日本人スピーチセラピストさんでした。

私の娘は今のところ発達障害と診断されていませんが、事前に告知されていたこの講演会の内容が、

・スピーチセラピーの種類とそのアプローチ法の概要
・二人のスピーチセラピストが実際行っているセラピーについての説明とその効果

であり、先週から娘のスピーチセラピーが始まっている私としては、今、とても知りたい内容だったので、期待して講演会に参加しました。

講演会に集まったのは、発達障害児を持つ父母ら約30名でした。中にはとても重い障害を持ったお子さんの親御さんもいたためか、講演会が始まってまずは、ここバンクーバーで発達障害児はどのような機関からどのようなサポートを受けられるかの説明が行われました。

スピーチセラピーにかかる費用を補助してくれる団体

補助が出るかどうかは、子供の障がいのレベルによります。勤務先のExtended Health Care Programでスピーチセラピーが保険でカバーできるかどうか確認しましょう。

Variety Club www.variety.bc.ca
・President's Choice Children's Charity www.presidentschoice.ca
CKNW Orphan's Fund www.cknworphansfund.com
・BCAPS - British Columbia Association of People who Stutter www.bcaps.ca
・Lions Club www.richmondlionsclub.org
・Elk Club www.elks-canada.org

(その他詳しくは、First Stepのこちらのページをご覧ください)

そして次に、スピーチセラピーの種類についての説明が始まりました。

スピーチセラピーには、「公共サービスのスピーチセラピー」と「プライベートのスピーチセラピー」の2種類あります。

公共サービスのスピーチセラピー

利点:無料
欠点:待ち時間が長い(バンクーバー市内の公共施設のスピーチセラピーの待ち時間は約1年)

・Vancouver Coastal Health (VCH) - Vancouver, Richmond
・Fraser Health - Burnaby, Fraser Valley, Langley, Maple Ridge, Pitt Meadows, New Westminster, Surrey, White Rock, Tri-Cities

 ・対象年齢は0-5歳
 ・言語、発音、コミュニケーション能力の検査、治療、教育
 ・リファーラルは親から直接できる(医師の紹介は不要)
 ・個別・グループセラピー

・Public Elementary Schools (School Dostrict)

 ・各学校、担当のスピーチセラピストがいる
 ・対象年齢は5-12歳

BC Centre For Ability(スピーチ以外の障がいにも対応)
BC Children's Hospital(スピーチ以外の障がいにも対応)

プライベートのスピーチセラピー

利点:待ち時間が(公共のスピーチセラピーに比べて)短い
欠点:有料

・個人経営のプライベートスピーチセラピー

 ・アセスメント、専門的な相談、個別セラピー、セラピー法の指導など
 ・セラピストのオフィス、自宅、またはクライアントの自宅でセラピーが行われる
 ・専門分野、対象年齢、アプローチ、料金等はセラピストによって異なるので、直接問い合わせた方がよい
 ・BCASLPA www.bcaslpa.ca
 ・RASP (Registration for Autism Providers) www.actcommunity.ca/rasp/
  ・クライアントが自閉症で6歳以下である場合、ここから補助が出る

・団体経営のプライベートスピーチセラピー

 ・Columbia Speech & Language Services
  www.columbiaspeech.com
 ・Westcoast Speech and Language Pathology
  www.westcoastspeech.com
 ・Chatham Speech and Language Services
  www.chathamspeech.com

プライベートのスピーチセラピストを見つける方法

BCASLPAのWebサイトにて、「Public」→「Find a Professional(タブ)」→「Speech-Language Pathologist」+「Private」+「Enter」でセラピストを検索。地域、対象年齢、言語を指定することができる。

セラピストを選ぶ際に確認する事項

・Do you work with preschooler/school age/adults?(○○歳を対象にセラピーを行っていますか?)
・What is your experience working with young children/adults?(これまでのセラピーの経験は?)
・Do sessions happen at my home or in a clinic?(セラピーは、セラピストのオフィスで行われるのか?それとも家まで来てくれますか?)
・Do you charge for travel time?(セラピー料金はいくらですか?交通費はチャージされますか?)
・How are parents involved in your sessions?(親はどのような形でセラピーに関わっていくのか?)

次は、スピーチセラピーとはどのようなものか説明がありました。スピーチセラピーは、子供が自分から人とコミュニケーションを取れるようにするためのものです。そこで、人が人とコミュニケーションを取るには、どのような要素を習得する必要があるかの説明がありました。

Communicationに必要な要素

・Expression & Body Language(言語表現力)
・Understanding(言語理解力)
・Hearing(聴覚)
・Voice(発声)
・Speech Pronunciation(発音・構音)
・Fluency(吃音せずにスムーズに話せる能力)
・Social Motivation(人と話したいという気持ち)
・Pragmatics(その場に応じた話し方、言葉、話題の選び方が可能であること)

セラピストはセラピーを行う前に、セラピーの対象となる子供のアセスメントを行います。その際、上記の要素のどれが欠けているかを見つけ出し、その欠けている能力を身に付けられるようサポートするということでした。

次に、家庭で日本語を教えることの重要さ(詳しくはこちら(PDFファイル・英語)にて)と、それと同時に、二ヶ国語語教育について気を付けなければいけないことの説明がありました。

・家庭の中では、徹底して母国語(日本語)を使用する

・親が第二言語で子供を育てた場合、子供に言語の発達障害が生じることがある(絶対ではないが、ネイティブスピーカーにしか身に付いていない隠れた言葉のルールが身に付かず、時間が経ってから障害が発覚するケースがある)

・ひとつの文章の中に2つの言語を混ぜてはいけない。日本語を話す時は100%日本語で、英語を話す時は100%英語で話す。

・二ヶ国語を話す過程で育った子供は、一ヶ国語のみの過程で育った子供に比べて、言語の発達が遅れることはない。

・子供が何らかの障害(自閉症など)を持っていたとしても、二ヶ国語教育が子供にとって負担になることはない。正しく環境を整えてあげれば、障害児でも健常児より多くのボキャブラリー(二ヶ国語分)を持つことができる

・幼児期に第一言語(日本語)を習得していても、英語環境で生活していくにつれ、第一言語を忘れてしまうようになる。第一言語をキープするには、生活の中で第一言語を最低25%使用しなければいけない

・カナダで生活していると、学校や友達、テレビなどが英語であることから、子供が成長するにつれ、第一言語(日本語)をキープするのは難しくなる。だからといって無理に第一言語を勉強させるとその言語を嫌いになってしまうので、楽しく・無理なく学ぶ方法を積極的に取り入れる。(例:漫画、アニメ、同世代の日本人の友達と接する機会を作る、など)

そして、参加者の中には国際結婚をしているカップルが多く、日本語と英語両方が話されている家庭で、子供の混乱を避けるための方法の説明がありました。

・人で区別する(例:ダディは英語、お母さんは日本語)
・場所で区別する(例:家では日本語、外では英語)
・時間、または行事で区別する(例:朝ご飯の時は日本語、夕ご飯の時は英語)

最後に、これから子供にスピーチセラピーを受けさせようと思っている父母に、スピーチセラピストとどのように付き合っていけばいいかの説明がありました。

・現在、自分の子供に明らかな障害が無くても、少しでも気になるところがあったら、アセスメントを受けるべき。理由は、待ち時間が長いから(平均1年)

・週に一時間のセラピーだけでは効果は10%。家庭での練習の重要度は90%

・プライベートのスピーチセラピストを雇う場合、セラピストを徹底的にインタビューするとよい。セラピストによっては、できることとできないことがある

・セラピーを続けても効果が無かったら、セラピストを替えてみるとよい

・第一言語が日本語の子供が英語のスピーチセラピーを受けても、ちゃんと効果が出る。セラピー中は、セラピストが英語で言ったこと(やったこと)を同じ内容で母親(もしくは父親)が日本語で再度やってあげるとよい

・セラピストから「セラピーを終わらせる」と言われた時、子供がまだ思ったより喋れるようになっていないなど、納得できないところがあれば、セラピーを継続するよう要求することができる

スピーカーの話が終わってから質疑応答があったのですが、それがすごく盛り上がり、かなり終了時間を押して講演会は終了しました。すごく内容の濃い講演会で、とても勉強になりました。

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