ダライ・ラマ「ダライ・ラマ自伝」

チベットの宗教的、政治的最高指導者として精力的に平和活動を行い、1989年にはその功績を称えられてノーベル平和賞を受賞したダライ・ラマの波乱に満ちた半生を、ダライ・ラマ自身が綴った自伝本です。「ダライ・ラマとは何か?」「チベット仏教とは何か?」を分かりやすく紹介しつつも、主な内容は1950年に起こった中国によるチベット侵略と、その後の人民解放軍によるチベット人虐殺、寺院の破壊行為、そして自分自身のインドでの亡命生活と、ダライ・ラマを知ると同時に中国、チベット、そしてインドの歴史もよく分かる内容になっています。

全てダライ・ラマの主観での内容になっているのですが、本一遍通して感心するのが、侵略行為を行った中国にさえも全てを否定するわけではなく、かの国を知った上で肯定する部分はちゃんと肯定しているところです。侵略後、ダライ・ラマが毛沢東、周恩来と話をするために北京に行った時の記述に、

マルキシズム(共産主義)は、万人の平等と正義に基づく制度、世界の悪への万能薬を宣言している。しかし、理論的観念からいえばその唯一の欠点は、人間的存在を物質的側面からのみとらえようとする面であり、また、彼らの理想追求のために用いる手段には疑問に思うところがあった。

とあります。気に入らない相手であっても辛らつな言葉だけを投げつけるのではなく、物事しっかり洞察し、共産主義の良いところを認めつつもその制度の危うさを見抜いているのにはスゴイなぁと思いました。

この本は1990年に発行されたものであり、話もそれまでとなっているのですが、それから14年経った今でもまだ、中国によるチベット侵略が続いています。

私の友達に、去年、チベットにハッパを喫いに行った子がいます(←何やってんだか)。彼が言うには、ラサはチベット人が住む市内を取り囲むようにして中国人居住地が存在し、警察が全く機能してないため、インドのゴアよりも上質なハッパ目当てに外国人が安宿に押しかけているらしいです。なぜハッパがあるのかというと、現在チベットではマリファナの生産が行われており、「上質なハッパが喫いたければチベットに行くといい」と一部のマリファナ愛好者の中で有名なんだとか。ハッパだけでなくケシの実も、普通の食べ物の香辛料に使われているとのこと(食べてもべつにハイにはならない)。しかし現地にはまともな食べものがないため、長居は辛いとのことでした。

中国が「経済開放」とうたって行った侵略の結果が、コレです。外界から隔離され、最後の楽園であった仏教の国が、見る果ても無くここまで堕落してしまい、世界中に散ったチベット難民の帰るべき国が帰ることができる状態でなくなってきていることに、非常になんともいえない悲しみを感じました。

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