Freedom of Speech(言論の自由)とHate speech law(ヘイトスピーチ抑止法)
先週末行われたVancouver Pride Paradeで、ゲイ反対活動家のBill Whatcottがパレードに参加し、同性愛者を批判するチラシを配るという事件が起きました。(Metroの記事はこちら)
Whatcottは、2010年、サスカチェワンの人権委員会に、彼の同性愛者への差別と糾弾がHate speech law(ヘイトスピーチ抑止法)により違法であると訴えられ、2013年、最高裁で有罪判決を受けています。
そのため、Whatcottは今回、Pride Paradeに参加するにあたり、自分のアイデンティティを隠し、ゲイに見えるように髪とヒゲをピンクに染め、「Calgary Church of the Flying Spaghetti Monster」という架空の団体名を使ってパレードに参加しました。そして観衆に、コンドームと一緒に同性愛者を批判するチラシを配りました。
その事実を知ったVancouver Pride Societyとそれを支援するコミュニティは激怒し、次々とWhatcottを批判する声明を発表しています。
このことをカナダ人の友人と話をした時、友人は、「これがアメリカで起こった事だったら、事態はちょっと違っていただろうね」と言いました。
彼によると、アメリカはFreedom of Speech(言論の自由)を尊重し、自分の考えや思想を自由に表現する権利があるため、もし誰かが同性愛者を公に批判してもその行為自体は罪にはなりません(名前を出して個人攻撃をし、結果的にその人の社会的評価を失墜させて何らかの損害を与えた場合は、名誉棄損として訴えることはできるのかもしれません)。
しかしカナダには、Freedom of Speech(言論の自由)と同時にHate Speech Law(ヘイトスピーチ抑止法)があります。Hate Speech lawはマイノリティの権利を守ることを目的とした法律で、もし誰かが特定のマイノリティに対して、差別的、憎悪的、軽蔑的なメッセージを発信するなどのプロパガンダ活動を行った場合は、その行為そのものが罪となります。表現の自由以上にマイノリティの権利を守ることが、カナダの社会では重要とされているのです。
Whatcottは、2013年の最高裁で「(同性愛は罪であるという)聖書の信念は合法的に公共の場で広めることはできるが、その信念を「嫌悪」と「中傷」に満ちた感情的な表現で広めることは違法である」として有罪判決を受けました。彼には彼なりの信念があるのだと思うのですが、マイノリティを糾弾する行為は決して許されるものではないと思います。今回は、やり方も汚かった(変装して、偽の団体名を使って、マイノリティをサポートしようという観衆に対して同性愛者批判のチラシを配った)のでなおさらです。
なお、BC州にも人権委員会(The B.C. Human Rights Tribunal)があります。Hate Speech Lawに抵触する事案は誰でも州の人権委員会に持ち込むことができます。この事件はこのまま終わるのか、それとも誰かがWhatcottを訴えることになるのか、行く末を見ていきたいと思います。
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